ごきげんよう、えぞしまです。


前に、
図書館とAIについて考えた記事を投稿しました。





その時、
選書についてはAIを補助的に使うことになるだけで、結局人間の手が入るけど、人間は公平な判断ができないのでそこが課題よね。
みたいなことを書きました。


今回は、
図書館の選書について掘り下げてみます。


えぞしまは大学図書館でしか勤務したことないので、公共図書館や専門図書館ではなく、どうしても大学図書館の選書の話中心になります。
あしからず。





さて。
図書館に置く本を選ぶ、と聞いて、
みなさんはどう思いますか?


いろんな本が見られて楽しそう!
どんどん本を購入できていいなぁ!
ボランティアでもやってみたい!


図書館の本を利用者が選ぶ、というイベントも定番になってきました。
(ブックハント、選書ツアーなど)


図書館に置く本を選ぶのは、楽しい。
しかし、決してウキウキショッピングではないです。




そもそも、図書館はどのように資料を購入しているのか?

図書館には普通、各書店の営業さんが出入りしています。
大手書店だけではなく、専門書を扱う書店の営業さんも出入りして、伝票を持ってきてくれたり、数が少ない時は納品もしてくれたり、新しいサービスについてこっそり教えてくれたり、あれこれお仕事してくださいます。
(なので、図書館員は各書店の営業さんの顔と名前をバッチリ把握してなきゃいけません。ビジネスの基本だね)


そして、営業さんは、
オススメの本のチラシや、図書館向けの本のカタログを置いていってくれます。
カタログによっては有料のこともあるし、チラシについては出版社から直接送られてくることもあります。
本だけでなく、DVDやCDなどの視聴覚資料のカタログもあります。
そりゃもうすごい量です。膨大です。


それらのチラシを一枚一枚丁寧にチェック。
購入するものを選びます。


と、ここまでは普通のショッピングですが…。


大抵の図書館は、
選書基準を持っています。

例えば、大学図書館なら…
自分の大学に学部がある分野のものは、すかさずチェック!
法学部があるのに法律系の本を買わずに何を買うのか。買うべき資料を買い逃さないよう、バシッと購入します。
法律系と言っても、総論的な内容のものから各論的な内容のもの、いろいろありますので、バランスよく購入します。
なんかやたら物権法の本ばかりあるぞ…という風にならないようにします。

したがって、この本は良さそうだから即買う!ではなく、現在の蔵書構成を絶対に見ます。
この時、重複調査(すでにその本を持っていないか確認する)も忘れずに行います。
ダブっていたら意味ないですからね。

シリーズものを購入するときは注意!
継続発注していることがあるからです。
つまり、そのシリーズの最新刊が出たら納品してね、とシリーズごと購入してしまうというものです。

すでに全部刊行されているものはまとめて買えばヌケはないですが、
今後シリーズとして刊行するものは継続発注をして、買い逃しがないようにします。

「あ、この本まだ買ってないじゃん」と思ってたら実は継続発注していた、というのはよくあることです。
シリーズものの本は要注意。

ちなみに、〇〇文庫とか〇〇新書みたいなのはシリーズもの扱いですよ〜。


逆に、学部やカリキュラムにないような分野のものはあまり購入しません。
あまり、と書いたのは、教養的な内容ならば購入することもあるからです。

芸術系の学部がないから、アート系の本は一切買わない…とやっていたら、芸術の教養が全くないアンバランスな学生が爆誕してしまいます。
とは言え、何でもかんでも買っていたら貴重な予算がいくらあっても足りないし、場所だってすぐいっぱいになります。

この内容なら専門的すぎるか?
いやいや、内容が面白そうだしキャッチーなテーマだから…
と、教養になる中身か、専門的な中身か、のラインの見極めが難しいんです。

自分の分野なら選びやすいですが、
全く興味がない世界の選書は大変ですよ〜。
選書しながらネットで調べて、あるいは自分の図書館の本で調べて…。



これは個人的に意識していることなんですが、
分野や内容が良さそうでも、
タイトルと中身が乖離していたら購入しません。
購入してもいいのですが、死蔵になるのが目に見えているからです。
大抵の利用者は、パソコンで本を検索して本を探すか、棚に並んでいる本の背表紙で探します。
タイトルが良くないと、そのままスルー。
「名は体を表す」を体現した資料でないと、見つけてもらえないんです。
これから本を出そうとしている方、ぜひユニークなタイトルをつけてください笑



この本は中身もよい、重複もしていない、
何より手に取って読んでもらえそう、
よし、購入だ!マルっ!!
やれやれ、一冊買うのに大さわぎ。あとは責任者の判断を仰ぐ…。


死ぬほど悩んで決めたのに、
決定責任者にペケされることもあります。
一応理由を聞く…「それならしょうがない」となればいいですが、「ええーそんな理由で?」となることもあり、
時にはそのまま議論大会へ…。


そんなわけで、選書はウキウキショッピングではないんです。
私は選書で悩むのが楽しいという人なのでいいのですが、人によっては「ひたすらツライ…選んでも選んでも責任者に却下される…ツライ…」となるみたいです。



もっとも、これは原始的なやり方であって、
選書する際に山盛りのチラシやカタログと格闘しなくていいように、書店さんがあらゆる選書システムを出してくれています。

アマゾンのあなたにオススメ!みたいな感じで、これまでの購入履歴や蔵書構成などのデータに基づき、AIがある程度選書してくれると、
選択肢が絞られてくるので便利だと思います。



それでも、最終的に本を購入するかどうか、見極めるのは司書です。
あなたにオススメ!はあくまで提案されているだけで、図書館の選書には補助的にしか使えないのです。




司書の弱点

そんな司書の弱点、それは心があること。
司書も人間なので、誰もが偏見を持ち不公平な態度をとります。
よい司書はこの点気をつけてますよ、もちろん。

以前勤めていた図書館では、
「私は中国が嫌いだから中国の歴史本は買わない!」みたいな、
信じられないようなめちゃくちゃな理由で選書している人もいたんです。
この人は司書資格なかったので仕方ないですが。
いやいや、中文学科あるんですけど…みんな中国について学んでますけど…何だったら中国人留学生や中国人の先生いますけど…。


人の考えというのは、年を取るとなかなか変化しにくいものです。
司書資格を持っている若手があれこれ言っても無駄です。



人によって判断基準が異なるというのもくせ者ですね。
異動や退職があるので、ずーっと同じ人が選書することはできないし、同じ人が選書することでその人の偏見を避けられないし。



あっちを立てればこっちが立たない。




正解なんて、ないんだ…。





この闇雲感というのか、果てしない感じが嫌で選書が面倒になる人もいます笑
しかも、購入した本はその図書館の蔵書となって永久に保存されます。
本を選んだ本人がいなくなっても、その本は蔵書としてコレクションされ残るのです。
それに、どんな資料を持っているのか、はその図書館の価値を決めてきます。
現時点だけではなく、未来の人たちの評価にもつながります。
この小さな重圧も意識すると苦しくなってきます。


とりあえず人気の本を置いておけばいい、
リクエストのある本だけ買えばいい、
そんな簡単な話ではないです。


選書の重圧を知らない人は、図書館の選書について語っても、何もかも的外れなので時間の無駄です。
重圧を意識しつつ、楽しんでいるような司書がいたらAIに負けないと思います。
そういう司書がいたら、引き止めておくように。