内容紹介

ベストセラーとなった『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』の姉妹篇。大切な家族や友人との食卓、旅などについて、ユーモラスに、洒落っ気たっぷりに描く。ダブル解説に高山なおみ、平松洋子。

内容(「BOOK」データベースより)

あるときはスペインの浜辺でパエリャに舌鼓をうち、またあるときはカポーティのベイクドポテトに想いを馳せ、なべ料理に亡き夫を思い出す―食べることの歓びがあふれる素敵な一冊。『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』姉妹編。


石井好子の食の随筆『巴里の空の下オムレツの匂いは流れる』の姉妹編です。

私が持っているのは、例のごとく単行本です。
印刷が活版印刷のような、すこし欠けた震えた文字で味わい深いです。


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東京の空の下になっても、想像をかきたてるお料理描写は健在です!


今回はクウェートで食べたアラブ料理や、タヒチでのエスニックなご馳走など、より珍しい料理が満載です。


初版刊行が昭和60年、バブルがもうすぐ終わるころでしょうか。
その時にはイタリア料理やフランス料理も珍しくなくなっていたのかもしれませんね。


それでも、家で異国の料理を作ってみる、それを食べたり、人にご馳走して楽しむ、その喜びは変わらないと思います。


異国料理だけではなく、京都のアブゼリのような、シンプルな和食も登場。
スキヤキの肉の代わりに油揚げを使い、せりと一緒にスキヤキ味で煮立てて卵で食べるというもの。
京都の老舗の丁稚さんが食べていたようです。
(主人はお肉を食べるけど、丁稚さんの分はないため)

こんな書き方すると、
「なんとも貧乏くさい料理…」「丁稚さんにもお肉あげたら」と思ってしまいますが、
石井さんの筆にかかると、妙に美味しそうなんです。

なんとなく、お肉もお魚も食べる気にならない、さっぱりしているけど病人のような食事は嫌…というとき、ありませんか???
そういう複雑な食欲のとき、石井さんのアブゼリを思い出します。



石井さんはパリに長年お住まいだったので、フランス人の話は多いです。
特に、フランス人の食への飽くなき追求!
中流以下の暮らしをしている人でも、歓迎のときやお祝いのときはモエのシャンパンと、こんがり焼いたバゲットにフォアグラを用意する。
その贅沢を知っているんですね。


もちろんいつもそんなものを食べているわけではなくて、
普段の夕食はサラダやスープ、パンのみ。
パンとハム、チーズなんかあればいい。
日本だと、ご飯とお漬物、お味噌汁みたいなもんでしょうか。
実にシンプル、一汁一菜のような粗食です。


豪華で手の込んだご馳走と、それにまつわる文化的なエピソードが次々に紹介されますが、
こういうシンプルな食事にもスポットを当てています。


奥さんが旦那さんに、
ご飯とお漬物、お味噌汁なんてものを出したらどうでしょう???
手抜きしている、栄養考えていない、旦那さんがかわいそう?????


本当に?
普段の食事が完璧である必要ありますか?


私、普段の食事はシンプルでいいと思いますね。
一汁一菜、あるいはパンとスープ。
世の中の人は、とにかくバランスよく食べなくては、と強迫観念に駆られているような気がします。

それじゃ、本当に食事を楽しめない。
シンプルで質素でも、これさえあれば、という気持ちがあればそれでいいのに。

私はもともと、食べることがあまり好きではありません。
何を食べるか考えるのも用意するのも面倒くさいし、片付けだってあります。食品の管理もしなくちゃいけない。
食べないで済むなら、他のことをしたいくらいです。


そんな私が、石井好子さんの本を読むと、
「ああ、おいしそうだな」「食べてみたいな、楽しそうだな」と感じてしまうんです。


なぜ、食べることが好きではなかったか?
それは、食べることが苦痛になっていたから。
本当はシンプルでもいいのに、負担になっていたから。

食べるために生きる、とまでは言わなくても、栄養をとにかくとらなくちゃ…と強迫観念に振り回されて食べるのはやめましょう。


この本には、ご馳走のことも書いてある。質素な食事も書いてある。
それだけじゃなくて、この料理を食べたときこんな風に楽しんで食べていた、というのが伝わるんです。
あ、私、もっと食べることに自由になっていいんだ、という気持ちになります。


おっと、文章自体は、とても気楽で楽しい読み物ですよ。
ワインを片手に、パンとハム、チーズなんかつまみながら読みたい本です。