<補足>
この記事は2018年11月11日、全体的に書き直しました。




ごきげんよう、元大学図書館員のえぞしまです。



図書館や司書がメインテーマになっている、
ありそうでなかったファンタジーということで、
泉光『図書館の大魔術師』をさっそく読んでみました。



んでこれが、
なかなか業界に精通している内容だったので、
報告申し上げます。


さらに、
「ここどうなってんの?」
という箇所もいくつかありましたので、
その謎を指摘しつつ推理していきます。








アムンという小さな村に暮らす耳長の少年は本が大好きであったが、耳長で貧乏だった為、村の図書館を使うことができなかった。そんな少年は差別が存在しない本の都・アフツァックに行くことを夢見る。ある日、少年は憧れのアフツァックの図書館で働く司書(カフナ)と出会う。この司書との出会いが、少年の運命を大きく変えることに──。孤独な少年が未来を切り拓く、異世界ビブリオファンタジー堂々開幕!!




作者は元図書館員?


当ブログ管理人えぞしま、実は図書館員だったのです。

だからわかる。
作者は図書館員(ライブラリアン)であると…!


まず、
図書修復の描写詳しすぎるでしょ。
国立国会図書館の研修かよ。

  • 破れ箇所の修復にはコウゾを使用する
  • 刃物で切るのではなく、破ってケバを利用する
  • 糊は繊維を引き出すような塗る

この世界にはコウゾがあるのか?

東洋はコウゾやミツマタなど、
植物が豊富なのでそれで紙を作れました。


これに対し、西洋では羊をめちゃくちゃ食べるので、
廃材利用ということもあり、
羊の皮をなめして作った羊皮紙が使われました。


日本で羊皮紙を使いたくても、羊いませんからね笑
その土地でたくさん取れるもので、紙をつくるんです。


『図書館の大魔術師』の世界では、
羊皮紙も使っているようだし、
西洋のものと東洋のものが、行き来しているのかな。
それだと、どことなく中東のような雰囲気なのは納得ですね。



それから、
めちゃくちゃ書誌学ぶっこみです。


情報はかつて、粘土板や木簡に記録された。
その後、紙が発明され、
巻子本(かんすぼん、ようは巻物)が誕生。
さらに、利便性の高い冊子体の本が現れ……


って、完全に書物の歴史ですね!!


これ作者図書館関係者だ。



中央図書館12の部署について考える

ここに文章を入力。作中、12の部署があると説明があります。
判明しているのは、修復室、渉外室、守護室の3つ。


そのほか、図書館の運営に必要な部署とは…
ほかの部署(作中では「室」)について考えてみます。



まず絶対あると思われるのは目録室
本一冊一冊の情報をとり、カタロギングする人がいるはず。
電子化されていれば図書館システム→OPACに登録ですが、
おそらくこの世界観だと目録カード管理だと思います。

AIが書誌情報を判断して、自動で目録作成…
なんていうほどハイテクじゃないですし、
(ていうか現代でもそんなの開発されてないし)
手作業で目録をとっているはず。

中央図書館ともなれば、
ものすごい所蔵冊数のはず。
目録室だけで建物1棟使っているかもしれません。

受入冊数もすごいと思うので、
それなりに人員を割いていると思います。
でないと、資料受入→配架まで時間がかかりすぎる。



それから、財務室
出納室とか経理室とかかもしれない。
名前はなんでもいいけど、とにかくお金を扱う部署があるはず。
問題は人員で、司書である必要がない
というか、司書より経理に長けた人(会計士や商人とか)がいないとおかしい。

もしかしたら司書試験とは別に、
一般職採用をやっているかもしれないですね。

あるいは、司書の中から研修を受けたり出向したりして、
経理や会計のスキルを持った人を置いているのかも。



あとは総務室か。
総務に人事が入ってくるかどうか。
採用試験をやっているみたいだし、
中央図書館の人事の仕事は多くて忙しそうですね。
リクルートをやり、採用試験をやり、研修の手はずを整え、
女性が多いから産休育休もあるだろうし。


そうなると総務と人事は別部署かな?
組織がフラットなら、人事査定はいらないけどね。


施設管理室とかもあるかもしれない。
建物や什器のメンテをするっていう。
これも司書より大工とか職人とか、
違うスキルを持つ人がいるかも。


<追記>
第2巻で、
新たに司書室があることが判明しました。
人事・採用を担当している部署のようです。


いよいよ司書(カフナ)試験へ…『図書館の大魔術師』第2巻 : かむいちかっぷ フリーランスの司書が書くブログ

主任はいくつの部署を経験したの?

今回の旅の主任アンズ=カヴィシマフは、
33歳で主任となっています。

しかし6児の母ですから、
新卒からずっとキャリア形成していたわけではなく、
最長で6年間は休んでいるはず。



この世界に産休育休あるかどうかわかりませんが、
理屈で考えても休まないと体壊しちゃいますからね。


シオは13歳で司書採用試験を受けに行こうとしています。
これに合格したら13〜14歳で入職し、
研修期間を経て一人前の司書になるようです。



そう考えると、
私たちよりずっと社会人経験が長くなりますね。

そうなると、33歳で役職ついてるのは何ら不思議ではない…
というかむしろもっと上の役職ついててもおかしくないくらいですね。
わりとフラットな組織なのかな?


研修期間がどのくらいかわかりませんが、
とりあえず主任は20年くらい司書をやっていて、
そのうち最長で6年は産休育休を取得していると思います。

つまり、稼働期間は最低でも14年。子育てしながらです。

ただしベビーシッターがいるはずです。
もしくは乳児院的なところに預けているはず。
でないと、旅(長期の出張)に出られないですからね。


14年なら2〜3部署、もしかしたらもっと経験あるかもしれない。
いや、そもそも異動とかないのかな。
専門職志向というか、ジェネラリスト育成志向ではなさそうだし。



ナナコは研修のとき修復室に入って、
そのまま着任したようですしね。

本人の素質によって部署を決めて、
あまり異動させないのかもしれない。

ある程度は本人の希望も聞いたりして。


中央図書館の業務はかなり分業制だし、
ジェネラリスト育成よりそっちの方がよっぽど効率いいですからね。



あとは癒着とかなければ……。
そのあたり、内部監査的な室があるのかな。
また部署の話に戻る……。


<追記>
よくよく考えたら、
双子や三つ子の可能性もありますね。
そうなると6年フルに休んでいないかもしれません。

しかし、そうなると、
普段の育児はどうしてるの?という疑問が残る…。
託児所とか中央図書館付属の全寮制学校がないと、
司書たちはキャリアを築けないでしょう。

そうなると、
中央図書館ってめちゃくちゃデカイ組織なのでは???


原作『風のカフナ』とは何か?

表紙や標題紙に、原作の表示があります。

IMG_0460


しかし、「風のカフナ」でAmazonを検索しても、この漫画しか検索されません。

国立国会図書館サーチはどうかな。

IMG_0463

日本語に翻訳されて出版されているならば、
国立国会図書館に納本義務があります。
だから、出版されているのにサーチに出てこないのはおかしい。


ググってみますか。

IMG_0462
あ!
やはり同じことを考えている人がいる笑





記事にもあるとおり、
出版されていれば絶対なんらかの検索に引っかかります。

タイトル、著者、キーワード…。
何にもひっかからない。
出てくるのはこの漫画のことだけ。

これは何かの伏線と見て間違いないです。

こういう手もあるのか、って感じですね笑




図書館にアクセスできない問題

主人公は、肌が白く耳がとがっているという見た目から、
村の人たちに差別されています。

そして、貧民であることから、
図書館へのアクセスができなくなっています。

そのほか、貧民は文字が読めないので、
何か教育をしないかぎり、図書館へのアクセスがそもそも遮断されています。



この、
情報にうまくアクセスできない人たちがいて、
助けてあげようと思えば手伝えるけど、
結局は本人が頑張るしかない、という
図書館サポートの限界みたいなテーマを私はなんとなく感じています。

現代で文字が読めないって人は少ないですが、
ネットできない、うまく検索できない、情報の見極め方がわかんない、という、
いわゆる情報リテラシーの低い人たちはたくさんいるわけです。

そういう人たちは、
「自分たちは情報リテラシーが低い」という自覚はないと思います。
知らない間に損してる、無駄な手間をかけている、騙されている……。

自分で気付けばヘルプを呼べるけど、
ヘルプを呼べることすら知らない、という。


現代社会では、
スマホもネットもあるし、
図書館に行かなくても情報へのアクセスは簡単になったけど、
情報への遮断や、能力による情報格差は生じていると思うのです。



この状況に、カフナたちはどう対処していくのかな???




主人公は見た目で差別されていますが、
作中に「男性は賃金が高く雇えないので、大抵は女性を雇っている」旨の記載があります。

ということは、
作中の世界では、当然のごとく男女で賃金に差があるってことです。
少なくとも、この村周辺では当然なんでしょう。


そんな差別問題にもスポットを当てていくかもしれませんね。





ちょっとしたこと、あれこれ

第1巻の中盤に差し掛かっているタイミングで、
「図書館の大魔術師」と出すところ。

まるで映画「日本のいちばん長い日」みたいじゃないですか。
注 リメイクじゃなくて、岡本喜八版のほうです。


日本のいちばん長い日
三船敏郎
2013-11-26







このタイトルの出し方、
しびれるわぁ~。



図書館とファンタジーって、
とても相性が良いですし、
(ビブリオファンタジーとでも言えばいいのかな?)
世界観がとても良いので、
図書館業界の人でなくても、ぜひ手にとってほしい作品です。


とはいえ、なんというか、
図書館いいでしょ、司書って憧れだよね、当然だよね、
みたいな前提で進められるのは個人的には嫌だな〜と思います。



憧れや尊敬は、理由なく湧いてくるわけじゃない。
一般の人からしたら、
図書館や司書なんて、大したことないので。



『図書館の大魔術師』の世界では、
カフナになるには厳しい採用試験を受けなくちゃいけないし、
誇りと信念が必要な仕事となっていますが、
そんなのどの仕事も一緒ですからねー。


カフナたちが信頼されているのは、
どういった取り組みが評価されているのか、
ぜひ描いて欲しいところです。




<追記>
第2巻が発売されました!
記事はこちらからどうぞ。

いよいよ司書(カフナ)試験へ…『図書館の大魔術師』第2巻 : かむいちかっぷ フリーランスの司書が書くブログ