ごきげんよう、えぞしまです。


恵比寿ガーデンシネマにて、
『ディリリとパリの時間旅行』を観てきました。









ベル・エポック、黄金時代のパリ。
万博博覧会では、ニューカレドニアの先住民族カナックの展示(!)が行われていました。
そこで展示されていたカナックの少女に、青年オレルが声をかけます。

少女の名はディリリ。
ニューカレドニアからこっそり船に乗り込み、
パリにやって来ました。

両親はいないけれど、
フランス語の先生にきれいな言葉遣いを学び、
現在は伯爵夫人のもとでお世話になっていることもあり、
素敵な身のこなしの、優雅なレディです。
初めて合う人には「お会いできて嬉しいです」と、
かわいらしくカーテシーをします。

両親のどちらかがフランス人だったようで、
ディリリの肌はどっちつかずの色をしています。
ニューカレドニアでは「明るい肌」と言われ、
パリでは「黒い肌」と言われる。
おまけに女の子ときている。
ディリリは、小さいながらも複雑な状況にいるのです。


配達人として、パリをすみずみまで知り尽くしているオレルは、
ディリリとすぐに仲良しになります。
そして、オレルが運転する三輪車に乗って、
パリの街を散策することになりました。


ベル・エポックのパリには、素敵な人達がたくさんいます。
研究者、音楽家、建築家、彫刻家、作家、画家、女優…。
その人達に会うたびに、ディリリは胸を踊らせて、
「私も研究したい!」
「大きな建物を作ってみたい」
「貧しい人の役に立ちたい」
と夢を語ります。


それを受け止める周りの大人達。
「女の子には無理」「カナックじゃできない」
そんなこと、言いません。
複雑な環境にいるディリリですが、
夢と希望でいっぱいです。


その頃、
パリでは少女誘拐事件が頻発していました。
「男性支配団」という組織が暗躍しているようですが、
警察もなかなか尻尾をつかめずにいます。
ディリリとオレルは、男性支配団の手がかりを探すべく、
パリの街を駆け巡ります……。


ミッシェル・オスロ監督の映像美、
そしてヒューマニズムに溢れたストーリーは必見です。




この先はネタバレあります。




踏みつけていることに気づいてる?

ディリリを裏切り、男性支配団にディリリを売り渡したルブフ。
最初はディリリを「メスザル」呼ばわりしたり、
女性のもとで働くことを嫌悪したりするなど、
典型的なヘイト野郎でした。

男性支配団のボスに謁見したときに、
知らない間に女性を踏みつけていることに気づきます。
「知らない間に」「踏みつけている」ということに、
思わずゾッとするルブフ。
おまけにボスは、
「ここには女はいない。いるのは『四つ足』だけだ」
と言い放ちます。

多くの差別は、
「知らない間に」「踏みつけている」ものなのです。
なので、「それは差別ですよ」と指摘されると、
普通は戸惑ってしまいます。

男性支配団のボスは「そんなの知るか」というタイプで、
女性が活躍するようになった世間を罵り、
「あ~あ、昔は自由に踏みつけられたのに…」
と威張っているのです。


その様子を見てすっかり目が覚めたルブフ。
「かわいそうな連中だ」と哀れんでいました。
ルブフは、「それは差別ですよ」と指摘されても、
きちんと次のステップへ踏み出せる人なのです。

どちらがよりよい姿なのか、明白ですね!



女性の敵は女性か?

ルブフは男性支配団のことを「かわいそうな連中」と評していましたが、
もっとかわいそうな人がいますね。


そう、
四つ足の教育係の女性!!!!!


彼女がどうして男性支配団に連れてこられたのかわかりませんが、
相当悲惨だったと思います。
そして、生き抜くために、
男性支配団に取り入り、教育係をつとめているのです。

よく、
「女性の敵は女性」
「女性同士はドロドロしてる」
と男性はニヤニヤして言いますが、
そこには搾取が隠れていると思います。

女性にはドロドロしていてほしいのか、
なんなのかよくわかりませんが、
性別に限らず、搾取される環境が続くと、
四つ足教育係のような人が出てくると思います。

性別が人間関係をドロドロさせているわけではなく、
行動や態度、言葉などがさせるのです。


「うちの職場は女ばっかりで、ドロドロしちゃってさ~」という方、
少し、見直してみませんか。
それ、改善できると思います。



四つ足の黒い布

四つ足教育は強烈で、
気高く賢いディリリですら参ってしまうほど。

また、ディリリたちが隠れ家に乗り込み、
少女たちを助け出すときも、
四つ足でとことこ歩いてしまいます。

その様子を見て、
「四つ足じゃない!立って歩くの!!!」
とディリリが一括するシーン、よかったわ~(しみじみ)。


ところであの黒い布、
やっぱりニカブ(ムスリマ用の黒いベール)をイメージしているのかしら。


イスラム女性の服装は、
女性抑圧の象徴のように言われることもあります。
でも、好んで着ている人もいます。
「いつも髪の毛を隠していなくちゃいけないなんてかわいそう」
と言われたとしても、
スカーフを頭に巻きたいムスリマがいるのです。


そのあたりは、
こちらの記事を読んでもらいたいと思います。
世の中の人達は、「着ろ」とか「着るな」とか、うるさいです。







華やかさと、その影

ベル・エポック、黄金時代のパリ。
たゆたうセーヌ川、街にはミュシャのポスターが溢れ、その風景を書き留める画家。
作家が遊び、音楽家は夢想する。
きらめく宝石、ドレスで着飾る女優、ムーラン・ルージュ…。

当時のパリは、
それはそれは華やかだったことでしょう。

そして、
女性の進出も少しづつ増えてきて、
大学にも行けるようになりました。

しかし、その影では、
「四つ足」にさせられ、「展示」されているような人たちも、
多くいたことでしょう。


この作品…というか、
ミッシェル・オスロ監督のテーマは、
ウェールズ公の「多様な者が互いに助け合うのがよい」
という言葉にあると思います。

華やかな憧れの時代。
現代は、そのときより少しは良くなっているのでしょうか。