ごきげんよう、えぞしまです。


前に岡本綺堂にハマったという記事を書きましたが…。




ちょうど梅雨時期に入ったということもあり、
「じっとりした気候にふさわしい怪談を読んでみるか」
ということで、
再び岡本綺堂に手を出しました。







3本足の蛙の竹細工を所有する、青蛙堂の主人。
ある春先の夜、雪の激しく降る中、
青蛙堂にて酒席がもうけられます。

酒席が片付いたところで、
出席者が一人ひとり、怪談を披露していく、
というのが大筋。


竹細工の青蛙の前で、
披露される怪談話。
怪談といえば夏の夜、
それも雨が降る中、じっとりとした空気の中で…
というのが定番ですが、
この青蛙堂鬼談は、
春の雪のような淡くひんやりとした、
一味違う怪談といった趣です。


ひたすら背筋が凍る、ぞっとするだけの怪談じゃない。


俳人たちの集まりにふさわしい、
怪談が披露されます。


派手さはまったくないのですが…
「なんとなく怖い」とか、
「妖怪じゃなくて人間が怖いかも」といった、
じんわりとした恐怖感が漂っているんですよね。

そして何よりも、
「その後どうなったのかうやむやになって消えていく」
というオチが多くて、
まさに「春の雪」のように儚く消えていきます。


ちなみに個人的にグッと来たのは、『清水の井』。
とある豪商の井戸に、
夜な夜な美少年の顔が映る。
豪商の姉妹がその少年たちに恋してしまい、
夜中にそっと起き出しては井戸にはりついている…。
というもの。

さすがにご主人が心配して、
その井戸をさらって、
さらにその井戸に纏わる話を徹底的に調べるのです。
その執念も、ちょっとゾッとする。

そして幸いなことに、
その井戸と美少年たちのいわれがわかるのですが、
これがまた予想外の展開で…。
その秘密がまた退廃的で、
その後の井戸のゆくえも謎めいていて、
とても印象的でした。



ちなみに、
岡本綺堂の養子がこの小説から名前をとって、
出版社『青蛙房』を創業しています。





やはり夜な夜な怪談の酒宴が開かれているのかしら。



そんなエピソードも含めて、
ミステリアスな魅力のある1冊でした。