ごきげんよう、えぞしまです。


私の夢は「働かないで暮らすこと」なので、
英国貴族や日本の華族制度について独自に研究をしています。

調べれば調べるほど、
「働かないで暮らすこと」からは離れていきますが…。

それはさておき、
やはり華族の話は興味深いので、
研究自体はやめられません。

ずっと読んでみたかった1冊を、
ついに読むことができました。


徳川おてんば姫
井手 久美子
東京キララ社
2018-06-14



著者は、徳川最後の将軍、慶喜公の孫娘にあたります。
生家は文京区のお屋敷で、
現在は国際仏教学大学院大学の敷地になっているところです。

これが、ものすごく大きなお屋敷で、
あまりにも広すぎて、
家族と顔を合わせることがなかった…なんてことも。


著者はお付きの人に囲まれて育ったのですが、
大きなお庭を走り回ったり、
木にも登ったりするおてんばぶりで、
「大将軍のお孫様なのに、なんてことを…」
なんて言われていたようです。


女子学習院での思い出は数多く、
級友たちとテニスをしたことや、
お弁当を食べたことなど、話が尽きません。
歴史の授業は、
「徳川家康をバカにしたら、徳川のお嬢さんが泣いた」
というエピソードも紹介されています。

この泣いてしまった徳川のお嬢さんというのが、
著者の従姉妹にあたるそうで、
それはこちらの本で紹介されています。






ブログ記事はこちら↓

雲の上の生活、それとも時代の激動に呑み込まれる生活…『華族令嬢たちの大正・昭和』




学校にはパッカードやクライスラーで送迎してもらっていましたが、
先生方が歩いて通われているのに、
自分たちは車で通っていて、
威張っているようで恥ずかしかった…なんてエピソードも。

そこで無理を言って、
市電を使って通うことになるのですが、
お付きの人がついてくるし、
「きょろきょろなさってはいけません」なんて言われるしで、
姉と二人でお付きの人をまいたこともあるようです。
う~ん、やんちゃ貴族って感じ!!!


自分が生まれる前に父親が急死、
その後母も癌で逝去してしまうという悲劇もありますが、
不自由なく暮らしていた少女時代。

しかし大人になれば、
いよいよ「家」というものを背負っていかなくてはなりません。

嫁ぎ先では「世継ぎはまだか」と急かされるし、
夫は戦争で家にほとんどいない。
なんとか娘は生まれたけれど、夫は戦死。
世継ぎがいなくなると困るということで、
著者は娘をおいて、実家に戻ることになります。

娘を手放すなんて信じられないことですが、
お家を存続させるためには必要なことでした。
家と戦争に振り回された著者。
お姫様も大人になったら「道具」のようで、
読んでいて辛いものがあります。


二番目の夫は軍医で、
病院をやっていたので、
著者もいろいろとお手伝いをします。
お姫様育ちだったのに、
いまや立派な労働者に。
おてんばぶりがここで役に立ったようです。

著者の姉は高松宮妃喜久子殿下ということで、
皇族の方とのエピソードも満載です。
「戦争に皆を巻き込んでしまった」
「戦争に負けてしまった」
という責任を強く感じていたようで、
常の人にはない気遣いと気高さを感じます。

こういった気品のようなものは、
後からはなかなか身につかず、
やはり生まれた瞬間から備わるもの、
と著者は記述しています。
だからこそ、家柄にこだわる。
家に翻弄された著者だからこそ、
身にしみて感じたようです。


華やかな暮らしぶりと、
戦争と家に振り回された人生。
お姫様育ちは優雅なだけではなく、
家に恥じないような振る舞いや、
責任を背負うという覚悟、
時には人を人と思わぬような冷酷さも必要です。


こういったものはなかなか身につかないと言うけれど、
後天的に得るためにはどうしたらいいのか、
それらを得ることによって精神の貴族となれるのか、
といったことが今後の研究テーマですね。

著者がこの本を書こうと思い立ったのが十数年前。
書いては休み、休んではまた書いてを繰り返して、
ようやく刊行されたのがこの本です。
とても貴重な1冊を遺してくださって、
本当に感謝です。




【訃報】徳川慶喜の孫で、先月作家デビューの井手久美子さん(95)死去 | まとめまとめ


こうしてみると、
江戸時代ってそんなに遠くないのね。
と新時代・REIWAにて思う…。