ごきげんよう、えぞしまです。


映画公開初日に、
ドキュメンタリー映画、
『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』
を神保町・岩波ホールで観てきました。

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス公式サイト





図書館員はもちろんのこと、
図書館にはあまり行かない人にも観てもらいたい映画ですね。
とくに、
図書館をサロンに仕立てるのが好きな人。
そう、あなたのことだよ。




ニューヨーク公共図書館はなぜNo1なのか?

冒頭、利用者からの問い合わせに、
回答していく司書の姿が映し出されます。

質問は様々、
今借りている本は何?といったものから、
ユダヤ系移民の出自を調べたい、といった、
とても専門的なものまで。

司書たちはその回答に、
懇切丁寧に答えます。
苦手な中世英語を訳しながら、
あるいはスペイン語が堪能な職員にバトンタッチしながら。

ここで、
「図書館って、こんな質問にも答えてくれるんだ!」
と気づくはず。
答えそのものズバリは答えられないけれど、
どうやったら調べられるのか、
どうやったらその答えにたどり着けるのか、
調べ物の道案内をしてくれる。


さらに、
ニューヨーク公共図書館は、
さまざまなイベントやセミナーを開催しています。
年齢、人種問わず、多くの人がやってくる図書館だから、
作家の講演会やダンス教室のようなカルチャー系も、
就職支援や起業支援のようなビジネス系も、
移民向けの情報発信、あるいは黒人文化の啓蒙、
子どもたちへの学習支援、障害者のためのイベント、
それはもう多岐にわたります。

日本だと図書館にコーヒーショップや、
サロンのようなスペースを作りたがる人が多いですよね。
「人が交流する場にしていきたい」とか言ったりして。

でも、それって本当に必要なの?

本当に利用者が必要としているのは、
デジタル格差の解消かもしれないし、
点字の読み方かもしれないし、
詩の朗読会かもしれない。

本当に、
コーヒーショップやサロンを必要としているの???

コーヒーショップやサロンがダメだと言ってるんじゃないですよ。
本当に必要なのかって聞いてるんです。



丁々発止の会議シーン

この映画は、
ニューヨーク公共図書館の風景を、
淡々と見せ続けてくるわけですが、
それ以上に会議のシーンが多いです。

会議は白熱。
なんと言っても予算のことがあります。

超有名な図書館でも、
やはり市との連携に沿っていなくちゃいけないし、
予算の確保も重要です。

それでも、
1番は市民のため。
そして、弱者に対して図書館として何ができるか。
市民に対して、どんな支援ができるのか。
それをずっとテーマにして議論しています。
まったくブレない。

そこには、
「こんな図書館あったらいいな」というような、
「ぼくのかんがえたさいきょうのとしょかん」論はないです。
ひたすら、市民のために何ができるか考えている。

だから何度でも聞くけれど、
サロンスペースって市民にとって必要なの?????


図書館の主役は人

とても印象的だったキーワード。
それは「図書館の主役は人」という言葉。

「図書館は将来なくなる」という人に対して、
向けたメッセージです。

図書館不要論を唱える人は、
図書館を倉庫だと思っています。

そう、
図書館を利用する人たちがいる、
という視点が欠けていますね。

ニューヨーク公共図書館だと、
本当にさまざまな利用者がやってきます。

調べ物をする人、
イベントに参加する人、
バックヤードではたらく人、
観光スポットとして写真を撮る人。
図書館の前ではコーヒーを飲みながら、
日向ぼっこする人もいます。

ニューヨークの市民と風景に、
図書館は溶け込んでいます。
だって、図書館は利用されているんだから。




図書館の数字は作れる!

日本の読書家は、紙の本にこだわる人も多いです。
未だに、電子書籍よりも紙の本が一般的。

しかしアメリカは逆でして、
電子書籍がとても人気なのです。

図書館に置く本、電子にするか紙にするか?
これは日本でもずっと議論され続けているテーマです。

よく民間のコンサルが図書館をプロデュースして、
「利用者が増えました!」「貸出冊数が増えました!」
とドヤドヤやっていますが、
実は図書館の数字を作るのは簡単です。

ベストセラー本をたくさん入れればいい。
ほんと、それだけ。

ニューヨーク公共図書館では、
電子書籍のベストセラー本は、
紙のものよりも予約件数が多くなっています。

電子書籍を増やせば、
利用者数が増えて業績になるかもしれません。

しかし、
「ベストセラー本は市場で手に入れられる」
「有料になるかもしれないが、なんとかなるだろう」
「図書館として保存すべき本を所蔵しよう」
と判断します。

短期的に見れば、
「よく借りてもらえる人気の本」を所蔵すればいい。
しかし、図書館経営というのは、
100年以上ものスパンで考えなくちゃいけない。

長期的な視野で、
どんな本を所蔵するのか、考えなくちゃいけないのです。


業績を気にするタイプの人ほど、
「ビジョンを明確に」「ビジョンがない」
「ビジョンが甘い」「ビジョンが」「ビジョン」
とビジョビジョうるさいですけれど、
そういう未来志向の人は図書館経営向いてるんじゃないですか?
だって100年単位で考えなくちゃいけないし。

(その人が生きているうちに、
評価が出るわけじゃないけどね。)


硬派なドキュメンタリー映画でした

ナレーション、一切なし。
ニューヨーク公共図書館の、表も裏もぜんぶそのまま見せます!
といった硬派なドキュメンタリーでした。

撮ってそのまま、のはずなんだけど、
映像のつなぎ方はめちゃくちゃ凝っている。
そのままでありながら、映画として冴えている、
というものすごい映画です。

途中10分の休憩を挟んで、
3時間40分という長丁場でしたが、
観てよかったと思います。

ものすごく混んでいたので、
もうすでに満席かな?と心配でしたが、
なんとか公開初日に見ることができました。


図書館の可能性のようなものを、
感じ取ってくれると、司書としては嬉しいですね。