ごきげんよう、えぞしまです。

巻末に同著者の作品が掲載されていて、
これがピンときたので読んでみました。



主人公遊馬は、
剣道・弓道・茶道を伝える坂東巴流の家元Jr.。
将来は家を継ぐことになっているのですが…。

これがどういうわけか、
ちゃらんぽらんのボンクラ息子。

親は京都の大学に行かせたかったのに、
試験をサボって遊びに行くし、
前髪だけ青く染めちゃう。

弟の行馬はちゃんとしているのに、
名前の通りのじゃじゃ馬です。

激怒した父・秀馬は、
遊馬を厳しい寺に修行に出そうとします。


「髪の毛七三に分けて、あんこ食っててもしょうがないだろ」


遊馬は出奔を決意。
行馬は兄の身を案じて、
家に伝わる家宝の茶杓「野分」を兄に託します。

友人の助けを借りて、
今までにない自由な生活を送る遊馬。

しかし、
ひょんなことがきっかけで、
あんなに行きたくなかった京都へ行くことに。
遊馬の逗留生活が始まります。


あんなに茶道が嫌だったのに、
京都で出会う人たちはことごとく茶人ばかり。
それも、みんなクセが強い!!!

和菓子作りが趣味の僧、
公家装束を着こなす教師、
口が達者な不動産屋。

遊馬は身柄を隠して、
「お茶なんか知りませ〜ん」という感じで過ごします。


茶人たちが、
茶碗がどうだとか、花入がなんだとか、
道具ひとつでやいのやいのと盛り上がるのを見て、
冷ややかな視線を向ける遊馬。

茶人というのは、
畳の目のいくつ目に置くとか、
茶巾のたたみ方はこうだとか、
とにかくくだらないことに執心なのです。


そんな世界に嫌気がさしていたはずなのに、
お茶の席ではつい、日頃のお点前が出てしまいます。

点てたお茶も味が良いので、
しだいに周りの人たちも怪しみ始めます。


そして遊馬も、
「茶道とは何なのか?」
「自分にとってのお茶とは何か?」
ということを、考え始めます。

頼りなくて自分がなくて、
かなり「イタイ」若者の遊馬。
理屈ではなく身体で理解するタイプだからこそ、
京都の空気を吸い、たゆたう文化に触れることで、
まだ言葉にならない「何か」をつかみ始めます。


そして、
遊馬は決意を固め、
明日への一歩を踏み出すのです。


ボンクラ息子の遊馬が、
少しずつ成長していく様子がとても魅力です。


著者もまた茶人ということで、
茶室の描写や道具に熱くなる人たちの様子など、
とても詳しく描かれています。

これが、
お茶を知らない素人でも、
お茶席に招かれて茶室の様子がありありとわかるほど。
畳の感触や湯の沸く音、
季節を含んだ風の匂いなんかを感じ取れます。

また、京都人の「イケズ」や、
江戸武士の「威圧感」などで、
思わずヒヤリ、脂汗、なんてのも感じます。


お茶ってこんなに楽しんでいいんだ…。
そして、そこに真理を見出してもいい。


遊馬が何かをつかんだように、
私たちも何かをつかめそうな気がします。


続編の『風にも負けず粗茶一服』も、
ものすごく面白かった!


こちらは、
遊馬の周りの人たちの縁が、
バチバチっと繋がるところにカタルシスがありますね。


まだ文庫になってないですが、
シリーズ完結編もあります。
単行本、買っちゃおうかしら。




イッキ読みしてしまうこと間違いなし!
なので、まとめ買いをオススメします。



さらに、
著者が茶道にのめりこむ様子を描いたエッセイもあります。


それは、とある茶会から始まった…松村栄子『ひよっこ茶人、茶会へまいる。』


合わせて読むと、おもしろさ倍増です。