ごきげんよう、えぞしまです。


北海道出身のえぞしまは、
漫画『ゴールデンカムイ』にどハマりしています。

『ゴールデンカムイ』を読むと、
アイヌ文化についてもっと知りたくなってきます。

私のように、
「『ゴールデンカムイ』を読んで、アイヌ文化が気になるけれど、
ガチの学術書は読んでられない…」
という人にぴったりの本が刊行されました。

なんと、
『ゴールデンカムイ』の監修をしている、
中川裕先生の著書です!





この記事は、
漫画『ゴールデンカムイ』を読んだことがある、
という前提で書いています。

もしまだ読んだことがないのであれば、
こんなブログなんか読まないで、
すぐに『ゴールデンカムイ』を読んでください。



それから、
アシリパの「リ」の字は、
小さい「リ」の字を書くのですが、
便宜的に「アシリパ」と表記させていただきます。

そのほか、
アイヌ語で使われるちっちゃいカタカナは、
みんな大きいカタカナで書いてまいります。

てか小さい「リ」ってどうやって出すの…。



カムイ=神さまではない

「カムイ」という言葉は、
日本語では「神さま」と訳されます。

しかし、
「神さま」と言う言葉では、
「カムイ」を説明するのは不十分です。

本来「カムイ」とは、
「人間にとって便利なもの」
「人間には生み出せないものをもたらすもの」
と言う意味があります。

毛皮や肉をもたらす動物たち。
川や木。囲炉裏に小刀。

自然にあるもの。
普段使っているもの。
私たちに恵みをもたらすもの。

そういった身近にあるものが、
カムイとみなされました。


この理屈だと、
スマホやパソコンなんかも、
カムイということになります。

私ってば、
スマホが手にはりついて、
離れないような生活をしているのに、
スマホに感謝ってしたことありません…。

スマホを悪くいう人もいますが、
私たちの生活を便利にしていることは確かです。

たまには、
普段お使いのスマホやパソコンに、
感謝の気持ちを持ってみてください。


そして、
アイヌの人たちは、
神と人間は同格のものであると考えていました。

肉や毛皮を私たちにもたらし、
人間世界のものを持ってカムイの国へ帰る…。
アイヌにとってカムイは、
「交易相手」といってもいいでしょう。

アシリパたちが「カムイ」というとき、
そこには奥行きのある、もっと深い意味が込められています。
漫画を読んだとき、その奥深さを感じ取ってほしいです。



チタタプチタタプ……は演出!

『ゴールデンカムイ』によく登場するアイヌ料理チタタプ。
杉元やアシリパたちは、ことあるごとにチタタプを作っています。

チタタプを作るときに、
「チタタプ、チタタプ」と言いながら代わりばんこに材料を刻むという風習があると、
アシリパは説明しています。

チタタプを刻んだことがない谷垣は、
「お、チタタプ処女か〜?」
「上手にできるかなぁ〜?」
と杉元と白石にゲスい顔で言われてしまいます。

チタタプは杉元たちにとって、
とても印象的な料理だし、
チタタプを刻む作業は、
とても大切なひとときなのです。


でも、
実はこの「チタタプ、チタタプ」の風習、
野田サトル先生の創作なんだそうです。

チタタプという料理はあるのですが、
刻みながら「チタタプ」というのは、
本当の風習じゃないのです。

しかし、
『ゴールデンカムイ』では、
その創作の風習をうまく調理し、
登場人物同士の親密さや心の開き具合などを示す、
名シーンのひとつとなっています。


こういった、
「事実を少し削ぎ落としエンターテイメントに昇華させる」
という技術に、
私はいつも感嘆させられるのです。


ネイティブチェックができない

著者の中川裕先生は、
『ゴールデンカムイ』の監修をされています。

また、
台詞を日本語からアイヌ語へ翻訳するのも、
中川先生の担当です。

前に、
アイヌ後には方言があるのに、
石狩方言と小樽方言を取り違えてしまい、
そのまま本誌に掲載されてしまったことがあります。

単行本では修正されましたが、
アイヌ語への翻訳は方言もあるし、
なかなか苦労されているようです。

なんといっても、
ネイティブチェックというものができないですからね。

アイヌ語はUNESCOに「極めて深刻」な消滅の危機にある言語と認定されていますが、
はっきり言って消滅したも同然なのです。

もう、
アイヌ語を母語とする人は、
ほとんどいなくなってしまいました。

誰が滅ぼしたのか、
どうして滅ぼしたのか、
それはちゃんと直視してほしい事実です。


それはさておき、
『ゴールデンカムイ』の世界には、
アイヌ語を母語とする人たちがたくさん出てきます。

明治時代の日露戦争後ですから、
アシリパのフチのように、
日本語がわからないアイヌもたくさんいたことでしょう。

初めてアシリパが杉元を家に連れてきたとき、
フチはアイヌ語で杉元に話かけます。
アシリパが通訳をして、
コミュニケーションをとります。

アシリパが寝てしまったあと、
フチは杉元に、手を握りながらアイヌ語で懸命に話かけます。
通訳のアシリパはいませんし、
吹き出しにはアイヌ語しか書いていないので、
杉元も読者も、フチが何と言っているのかはわかりません。

しかし、
杉元は「わかったよ」と言って、
フチに微笑み返します。

私たちは、
アイヌ語がわからないけどハートが伝わったという、
杉元と同じ体験をするのです。

この演出がすごくニクい!!!

本誌では日本語訳は載っていなくて、
単行本の最後のページにてようやく日本語訳が掲載されます。
そこで初めて、フチが言わんとしていたことが判明します。

みなさんは、
杉元のようにフチの言おうとしていたことが、
わかりましたか?

こんなニクい演出も、
アイヌ語の監修をしている中川先生の支えがあってこそです。


『ゴールデンカムイ』好きなら読んで間違いなし

『ゴールデンカムイ』自体ものすごくエンタメ性が高くて、
読み応えのある面白い漫画なのですが、
この本を読むことで、さらに漫画の魅力が増してきます。

また、
野田サトル先生のセンスというか、
発想力のようなものにも驚かされます。
中川先生も野田先生の技量に舌を巻いていて、
そのエピソードも魅力的なんです。
いや〜この人本当にすごいぞ。


というわけで、
『ゴールデンカムイ』をより楽しむために、
ぜひ読んでもらいたいです。

まだ『ゴールデンカムイ』を読んでいない人は、
先に漫画を読むことをオススメします。