ごきげんよう、えぞしまです。


2019年3月、
ポプラ文庫にてあの名作が復刊しました。

思い起こせば2006年、
私は大学センター試験を受けていました。
午後イチの国語の試験、
あらすじを読んで衝撃を受け、
中身をみて更に衝撃を受け、
その後静かに伝説となった、そんな小説です。





進学校の女子高で、自らを「僕」と称する文芸部員たち。17歳の魂のゆらぎを鮮烈に描き出した著者のデビュー作「僕はかぐや姫」。無機質な新構想大学の寮で出会った少女たちの孤独な魂の邂逅を掬い上げた芥川賞受賞作「至高聖所」。少女たちの心を撃ちぬいた傑作二編が、待望の復刊!


センター試験が終わって、学校に行ったら、
クラスの体育会系の男子が、
「国語の問題なんかキモかった。オタクっぽい」と言い捨てていて、
今思い出しても張り倒してやりたい気持ちになります。
お前は、何もわかってない。


女子高生の千田裕生は、
確かに文芸部に所属して、自分のことを「僕」と称し、
コネコネ理屈を考えているように見えるかもしれない。

しかし裕生は、
自身が抱える複雑な感情を、
ちゃんと言語化しているわけよ。

それってすごいことなんだけど、
わからなかったかな???????????

周りの女子がちゃらんぽらんしているのを、
真に受けて信じていたのかな、君は??????
はりたおすぞ。


かぐや姫は、
おじいさんとおばあさんに愛情たっぷりに育てられますが、
最後は月の世界に帰っていきます。

月の世界に帰ることを告げるかぐや姫は、
物憂げで涙も流していましたが、
月の使者が持ってきた薬を飲み羽衣をまとうと、
これまでおじいさんとおばあさんに抱いていた感情は消え去り、
悲しみも憂いもない月の世界の住人になってしまいます。


スタジオジブリの『かぐや姫の物語』では、
ここを悲劇的に書いていました。
ジブリヒロインは、日常を丁寧に暮らし、
はつらつと生きる、そう、「生きること」に喜びを感じる、
それがジブリヒロインの特徴。
ちょっと斜に構えてクールとか、皮肉ばかりいっているとか、
そういうのはジブリヒロインになれないのです。

だから、
かぐや姫が生きること、
食べて食べられ、老いて病になり、
いつかは親しい人と別れ、
それでも生命の輪廻のダイナミズムを感じて生きる、
そんな気持ちを一瞬で忘れてしまうことを、
「悲劇」ととらえて描いたのです。


しかし、
裕生が「生命の讃歌ッ!」とか言うだろうか?

いつか大人になって、
会社づとめをして給与をもらい、
それで服や靴を買い、イタリア料理を食べて、
ボーイフレンドとでかけて、
部屋には自分の好きな家具を置いて、
いわゆる普通の女の子として普通の楽しみを味わう…。
てのが想像つかないんです。

たぶん裕生もそう。
自分が大人になって、
それも女になって生きるってのがよくわからないし、
普通にそうなるとは思えない。

大体の女子高生は、
自分が将来どうなるかなんて想像つかないでしょうが、
裕生はコネコネ考えるタイプだから、
いっそうわからないんだよね。
わからないことを自覚している。


だから、
かぐや姫が羽衣をまとって、
感情のない無味無臭の世界に行ったことは、
裕生にとっては「悲劇」じゃなくて「希望」なんだよね。

生きてる!って実感がわかなくていい。
というか、そんなもの必要?
ってくらいに。


でもそれを、
意地悪な友達に、「若紫願望!」と言われてしまう。

いつまでもピュアでいたい、というのは、
崇高なんじゃなくて大人になるのが怖いだけ。
「いつまでもピュアで痛い」ってこと。

裕生は自分の中にいる「少年」を自覚し、解き放ちます。
「女子高生」として「女」として、
自分の知らない間にあれこれ背負わせてくる周りの人たち、
とにかく窮屈を強いる裕生から開放するのです。

それじゃまわりの子たちと同じく、
女子高生をやるのかというと、そうではない。
裕生はほかでもない「わたし」を手に入れたというわけ。

女でも男でもなく、子どもでも大人でもなく。
今なら許される。

この裕生の脱皮みたいなのがいいんだけど、
このエモさは昭和おじさんには難しいかな?


センター試験でこの小説を見たときはびっくりしたけど、
今ちゃんと読み返すと、すごくいい小説だな~と思います。
国語の問題、それも人生の刹那を決める試験問題にはぴったり。

文庫版には、
芥川賞受賞作の『至高聖所(アバトーン)』も収録されていて、
とても豪華な1冊となっています。
きりりと強い意志を感じさせる表紙のイラストも最高だし。


2006年当時、SNSがなかったから、
みんなの反応がわからなくて男子のセリフに戸惑ってしまった。
その後、実はみんなも気になってたんだとわかり、
こうして復刊した本を手に取れて嬉しい限りです。

「国語の問題なんかキモかった。オタクっぽい」と言い捨てた、
同じクラスの体育会系の男子を、
私と一緒にはりたおしたいという方、名乗り出てください。



松村栄子の書いた、
ポップな青春小説もあります。

茶ごころたっぷりの家元Jr.青春ストーリー『雨にもまけず粗茶一服』


著者が茶道にのめりこむエッセイ。
「かぐや姫」とは雰囲気全然違います。

それは、とある茶会から始まった…松村栄子『ひよっこ茶人、茶会へまいる。』