ごきげんよう、えぞしまです。



サヴィニャックの表紙が素敵だったので、
思わず手に取り読んでしまいました。
私、けっこう原田マハにハマっているな。


ロマンシエ (小学館文庫)
原田 マハ
小学館
2019-02-06



遠明寺美智之輔(おんみょうじみちのすけ)は、
父が政治家というアーティストの卵。
同じ大学の高瀬くんに恋する、乙女系男子。
恋も実らず、アーティストとしてもなかなか報われず、
おまけにパパの知り合いの娘さんと結婚させられそうになり、ぐずぐずの状態。

そんなミチノスケに、ついに幸運が訪れます。
それは、パリ留学。
大学の援助を受け、パリへの切符を手にしますが、
なんとその留学先のスクールもいわくつき。
憧れのパリ生活なのに、何も結果が出ないまま。
もうすぐ学生ビザも切れそう…。
どうする、ミチノスケ!!?

しかし、ひょんなことから、
作家・羽生光晴(はぶみはる)をリトグラフ工房で匿うことに。
ミチノスケはミハルの小説の大ファンだったので、
嬉しいやら戸惑うやら……。

ミハルの潜伏先であるリトグラフ工房idemは(※実在する工房です)、
過去に様々なアーティストと作品を生み出してきた、
歴史と実績のある工房。
しだいにミチノスケも、リトグラフの魅力に目覚めます。

そして、
ミハルの過去や、なぜ小説を書き続けてきたか、
なぜ書けなくなったのかなどを、
知ることになります。

いいことが起こったかと思えば、またトラブル。
そのトラブルを回避するために、
とんでもない行動に出る……。

読んでいて、ずっと飽きさせない、
笑って切なくなって、スッキリ終わる、
爽快な小説でした。


「ラブコメなんて趣味じゃない」
「90年代のトレンディ・ドラマじゃあるまいし」
と食わず嫌いはもったいない。

主人公のミチノスケが、
乙女系男子なんだけど、報われない恋をしていて、
本当は可愛いものが好きなんだけど、本当の自分を出せなくて、
恋も仕事もなかなか報われなくて、
それでも試行錯誤し続けるという、
とても魅力的な人物だから。

平成生まれなのに、
言葉遣いが昭和なのも結構いい(笑)

それにミチノスケくん、
すごくおしゃれなんです。


「ドリス・ヴァン・ノッテン」のグレー・オン・グレーのセットアップ、
古着屋で見つけた「ターンブル&アッサー」のコットンポプリンのクレリックシャツ。
足元は、キヨミズ買いした「オールデン」の編み上げブーツ。
そして、「マルタン・マルジェラ」の白いトートバッグ。

自分で作ったブランケット・フォン・ド・ヴォーを保温ジャーに入れて、
ミハルのもとへデリバリーするミチノスケ、すごく素敵です。

それに、
お部屋の家具も自分で手直ししたり、
ファブリックもこだわったりして、
とても居心地のいい空間を作っている。

私は、丁寧に生活をしている人が好きだし、
自分の身の回り(部屋や食べ物、着るもの)を大事にする行為が、
とても好きなのです。

それに、
ミチノスケはいろんな困難にあっても、
なんとか前に進もうとしている。
ときにはうんと落ち込むけれど、
自分の慈しみ方を知っている感じ。
だから、大好き。


ミチノスケが困ったときや、迷っているとき、
「行けッ」「がんばれ!」「そこだッ」
とつい応援したくなってしまいます。



それからそれから。
この小説のすごいところは、
(というか原田マハのすごいところ?)
小説内で開催されていた展示を、
現実世界でも展開してしまうところ。

もともとそのつもりでこの小説を書いたのか、
書いているうちにやってみたくなったのか、
そのあたりはわかりませんが……。
もともとアート関係の仕事をしていたとはいえ、
原田マハの実行力と並々ならぬ度胸に、
ひたすら驚かされてしまいました。

文庫版の解説には、
その件で関わりのあった東京ステーションギャラリーの富田章氏が、
「idem展」の経緯を紹介してくださっています。
いやいや、この流れを作れるのって、すごい。


私もこのブログを書いているわけだけれど、
そしてもうすぐブログを初めて1年になるけれど、
文章で人の心を動かせるって本当にすごいと思う。
そしてさらに、
人を感動させる流れを作れるってことに、尊敬してしまう。


『ロマンシエ』はワイン片手に気楽に読める小説だけど、
すごいと思う気持ちは凄まじいほどに沸き起こってきます。