ごきげんよう、えぞしまです。



もうすぐ平成も終わるということで、
突然ですが宮中に関する本を一つご紹介。

桃の節句も近いですしね〜。



というわけで、
講談社学術文庫です。


これは、華族出身の著者が、
明治の宮中に出仕したときのことを綴ったもの。
宮中でのことは、
たとえ家族でも話ではならないとされていて、
当然公文書にもなかなか記録されないので、
文庫本でしれっと出てますが、
実はめちゃくちゃ貴重な記録なのでは???


宮中は、俗世とは別世界のようです。
まず、言葉が特殊。
いわゆる「御所ことば」なんですね。
父を「おもうさま」、母を「おたたさま」と呼び、
魚は「おまな」、お寿司は「おすもじ」、するめは「するする」、
滞りないことを「おするすると」と言い、
ご病気は「御異例」、お毒味は「おしつけ」、
聞き慣れないけれど、リズム感があってとても可愛いことばです。

御所ことばってキュートだけど、
一般にはなかなか使えない。
「おささをどうぞ」なんて言ったら、変な顔されちゃうもんね。


それから、職名も複雑です。
典侍(てんじ)、権典侍(ごんてんじ)、掌侍(しょうじ)に命婦(みょうぶ)。
典侍や権典侍は「すけ」、掌侍や権掌侍は「内侍」と呼び、
それに源氏名をくっつけて呼ぶのです。
そのほかにニックネームや、もちろん本名もありますから、
一緒に働く人の名前を覚えるので一苦労です。

名前を間違えても相手に失礼ですが、
本名以外は明治天皇がおつけになったということで、
ないがしろにはできません。


当然宮中でのお仕事は大変です。
しきたりも多いし、先輩女官にはクセの強い人もいます。
華族出身ならば、かなり躾は厳しかった、
それこそ箸の上げ下ろしまで躾けられているような人たちですから、
キビキビ生活するのは慣れてると思いますが…。

全然違う世界だけど、
一緒に働く人たちに、
それも強烈なお局様に辟易するのは、
いつの時代も一緒のようです。


なんだか怖い世界だけど、
明治天皇と皇后のエピソードはほんわかしてしまいます。

皇后は雷が苦手で、
空がゴロゴロとしてくると衝立の中で、
じっとしてらしたのだとか。
それを見た明治天皇が、
「誰かそばにいておあげ」と指示されるというエピソードが好きです。

著者は皇后のお召し替えも経験したのですが、
まだ手順を覚えておらず、もたもたとしてしまった。
すると、「誰もいないときなら教えてあげるよ」と声をかけてもらったそうです。

先輩の教えは人によって違うので、
どちらが正しいのか尋ねると、
「どちらも私のためにしてくれているので、黙っています。でも、実をいうとこちらのほうが好きなのだ」と教えてくれたそうです。

やんごとなき方々にお仕えする女官たちも、
寝ても覚めても気を使ったでしょうが、
そのやんごとなき方々も、
絶えず気を使われているのですね。

少し間違えられたくらいで、
ぎゃんぎゃん怒鳴るような人は、
猛省してください。
怒鳴ることはリーダシップでもカリスマでもないので。



というわけで、
宮中での女官たちの生活や、
しきたり、エピソードなどなど、
公文書には残らない話が満載です。

巻末には御所ことば一覧や、
宮中の間取りまで載っていて至れり尽くせり。
これを読んでえぞしまと御所ことばで会話してみませんか?笑

クセの強い意地悪女官はNGです。