ごきげんよう、えぞしまです。



大人気ファンタジー『十二国記』シリーズの、
最新刊が2019年に刊行されるということで、
「十二国記マラソン」と称してシリーズを読み返すということをやっています。
ひとりで。


年末からずっと読み続けてまいりましたが、
早いものでいよいよ最後の巻となりました。

最新刊は戴国の話ということで、
この巻に続くストーリーが展開されるとみてよいでしょう。

時間がないけど、とりあえず復習しておきたいという方や、
十二国記を知らないけれど、サクッとビッグウェーブに乗りたい方は、
ぜひこの巻を手にとってください。






『月の影 影の海』や『風の万里 黎明の空』で、
王も台輔も行方知れずとなっていた戴国。
その将軍、李斎が慶国にボロボロになって駆け込んでくるところから、
物語は始まります。

李斎によると、
王は文州の乱を平定する途中で行方不明に、
台輔は蝕を起こし、これまた行方不明になってしまいました。
その後に、権力をほしいままにしたのが阿選。
驍宗の優秀な部下でしたが、どうやら黒幕らしい。

しかし、阿選は一枚も二枚も上手で、
兵を集めて討とうとしても、身内から寝返るものが発生し、
なぜかうまくいかない。
もう、身内を信用することはできない状態でした。

それで、
李斎は泰麒と同じ胎果である、
景王のもとへ駆け込んできたのでした。


なんとか助けたいと思う陽子でしたが、
そこに立ちはだかるのは「覿面の罪」。
十二国は、お互いに干渉しあわないのが鉄則。
例え仁にもとづく理由でも、他国に出兵することは、
天が定めた罪に反するのです。

この天のさだめた理をかいくぐり、
泰麒救出作戦を陽子は提言します。

普段は協力し合うことのない十二国が、
力を合わせて泰麒救出を試みる、前代未聞の事態になります。

これまで出てきた国やキャラクターがたくさん出てきますので、
シリーズの中でも賑やかで華やかな作品となっていますね。


十二国は、陽子からすれば神仙や妖魔がいて、
とてつもなくファンタジーな世界のはずですが、
実はその仕組は実にシステマチックであることを知ります。

なんというか、
法律の裏をかき、穴を突いていく、
敏腕の法曹職も裸足で逃げ出すロジカルな世界なんです。

十二国と蓬莱、お互いが現実でありファンタジーであるという、
一味違った構造になっているのです。

これが、
十二国記を単なるファンタジーにとどめおかない理由なんです。

そこを説教臭く感じて、
苦手な人もいるわけだけど、
ただの現実逃避のためのファンタジーじゃ、つまんないと思うから。



さて、
これ以降は、
ネタバレもたくさんありますので、
その点ご了承ください。


はい、ネタバレコーナーです。


ここからは、
『黄昏の岸 暁の天』のポイントを書いていきます。



範国国主、呉藍滌(ごらんじょう)かっこよすぎ問題

新キャラということで、
氾王ならびに氾麟が登場しました。

氾麟はとても愛らしくておてんば。
ちょっと高飛車で、でも愛嬌もあって、
いかにもお姫様という感じで、すごく良いキャラです。

そして、
それ以上にインパクトがあるのが呉藍滌。
何も産業のなかった範国を、
十二国随一の工匠の国にした王です。
その治世、300年。

本人は粋な趣味人。
着ているものも、簪も耳飾りも、
さりげなく仕立ての良いものばかり。
インテリアにもうるさくて、
お部屋の家具の配置を勝手に変えてしまうくらい。

一番びっくりしちゃうのが、
呉藍滌、すらりとした長身の男性なのです。
着物もアクササリーも女性ものだし、
喋り方も女仙のようだけど、男性なのです!!!

十二国でのジェンダー感はよくわからないのですが、
祥瓊や李斎が「奇矯な身なり」と感じたことから、
「女装する男性」というのは十二国でも珍しいようです。

かなり個性的なキャラクターなのですが、
セリフがすべて!名言なのよ!!!
もちろん金波宮のインテリアを変えるとか、
李斎に腰帯を見せるときの一連の流れだとか、
そういった行動も!すべて!すてきなの!!!!!!

一番グッときたのが、手紙。
紙は淡い藍色、墨も涼やか、筆跡は流麗。
おまけになんと、手紙に香を焚きしめてある。
私、手紙に香りをつけるっていうの、
これで初めて知りましたよ。
すごく風流なので、手紙を出すときは真似したい。

ていうか、
粋な趣味人になりたい。
どうやってなるの?




祥瓊、有能じゃないですか問題

さて、
とにかくこだわりの強い呉藍滌。

慶国の仕官たちでは、
気が利かないということで太刀打ちできません。

そこで祥瓊を出してみたら、
気に入られたようで離さない。

祥瓊って、センスがいいんだよね。
恭国で下女をずっとやってたら、もったいなかったよね。

ずーっと単純労働ばかりさせていたら、
その人のポテンシャルがどのくらいなのか、
永遠にわからないのです。
本人でさえも。
これは、覚えておきたい事実だと思いませんか?



自分を救えるのは、自分だけ!

戴国を救うため、
碧霞玄君にお伺いを立てたり、
西王母に対面したり、
伝説的な存在だった「天」と対峙する場面があります。

なぜ、人道をもって治めよという天が、
苦しむ戴国を見捨てるようなことをするのか。

その明確な答えはわかりませんが、
陽子のセリフにヒントがあると思います。


「もしも天があるなら、それは無謬ではない。実在しない天は過ちを犯さないが、もしも実在するなら、必ず過ちを犯すだろう」

「だが、天が実在しないなら、天が人を救うことなどあるはずがない。天に人を救うことができるのであれば、必ず過ちを犯す」

「人は自らを救うしかない、ということなんだ――李斎」



そして泰麒帰還後、
泰麒も同じような結論に至ります。


戴国を我が国というには、
自らの手で支えなくてはいけない。

自分は非力だけど、
非力であることに安住できるほど幼くはない。


十二国記って、
自分の不幸を憐れんで他人のせいにするとか、
とにかく我慢して自分をかわいそうに思ってるだけとか、
そういう人に厳しい。

自分を救えるのは自分だけ、
家族でも会社でも国でも天でもない。
そこに、強いメッセージが隠されているように感じます。



人の上に立つって…

泰麒救出作戦に当たり、
これまでの慣例などをイレギュラーに運用しまくった陽子。

挙句の果てに、
天官たちの怒りを買ってしまいます。

陽子は気安くて、
細かいしきたりにとらわれないところが良いところですが、
それでは困る人達もいます。

人の上に立つと、
うかつな行動、よかれと思ってしたことが、
とんでもなく周りをかき乱していることがあります。

陽子はもともと女子高生で、
社会人経験もないので、そこまでわからなかったのでしょう。
浩瀚のように、叱ってくれる人がいてくれてよかったけど。

そして、
信用を作ることの困難さも実感します。
陽子の周りには、信用できる人が少ない。
信用されないからと言って陽子に文句を言ったら、それは逆恨み!
頑張る方向が違います。

陽子に八つ当たりするのではなく、
信用をこつこつ作るしかない。
それを怠ったやつを、憐れむ必要はないということです。
う~ん学びになるなぁ。



んで、驍宗はどこいったの?????

驍宗は、天下にその名を轟かす武人。
おいそれとやられるような人ではありません。
もし手負いの怪我を負っても、
それなりの期間潜伏して、兵を集めて、
逆賊をぱっぱと討っているはずです。

でも、それができない。

このあたりが、
最新刊で明かされると思うんですが、
ここで私の予想をちょっとだけ。

最後の最後で、
『戴史乍書』というのが載っています。


丈阿選は禁軍右翼に在りて本姓は朴、名を高、兵を能くして幻術に通ず。


ん?????

幻術に通ず??????????



戴国って、
驍宗はじめ筋肉野郎のイメージだったので、
魔法使いキャラってイメージはなかったのですが…。


阿選、
きみ幻術使えるの?????



もし幻術が使えるのなら、
敵をうまいこと幻惑させてしまうこともできるだろうし、
驍宗を捕らえておくこともできると思います。

景麒が偽王に捕らえられているとき、
角を封じられて、人の姿にもなれず、
使令も使えず、言葉も話せない、
生かさず殺さず…な状態にされたことがありましたよね。

驍宗も同じように、
生かさず殺さず、でも話すことも身動きも取れない、
みたいな状況になっているのではないでしょうか。


阿選って、
めんどくさいことに蓋をして、しまい込むタイプだと思います。

白雉が生きているとめんどくさいから、
壺に押し込めて埋めちゃうとか、
自分にとって都合の悪い街を、
なんにも残らないように焼き尽くすとかね。

だから驍宗も、
押し込めてなかったことにしている。

「驍宗を殺せば?」と思うけど、
そうすると逆賊になってしまうし、
もし万が一泰麒が戻ってきたら、次の王が選ばれてパーになる。
だから、驍宗を生かさず殺さず状態にしているのかな?
と予想しています。

なぜ権力をほしいままにしているのか、
そこまではわからないですが…。

もしかしたら、
「驍宗がウザい」以上に、深い理由があるかもしれません。



さあ、
長かった十二国記マラソンもついにゴールしてしまいました。

もうね、
いつでも最新刊刊行してくださいって感じです。
こちらは準備万端です。



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