ごきげんよう、えぞしまです。


小野不由美の大人気ファンタジー、
十二国記の新作が2019年に刊行されるということで、
復習を兼ねて十二国記マラソンをやっています。

今回は、
『月の影 影の海』の続編にあたるこちらです。
時系列的には陽子の旅よりも前ですね。



こちらは戴国のお話。
2019年に刊行される新作も戴国の話なので、
予習復習としてはマストな一冊。


どういうわけか、
日本で普通の人間として生まれてしまった泰麒。
本来なら備えているはずの麒麟としての能力を、泰麒は何一つ持っていません。

日本では周りと馴染めず、
おばあちゃんにはキツく当たられるし、
そのことで両親はいつも喧嘩、
母親は一人でこっそり泣いているし、
弟には「お前のせいで叱られた」と言われるし。


陽子もそうなんですが、
泰麒もやはり地獄のような環境で育っています。
しかも、泰麒はまだ10歳。
あまりにも背負わせるものが大きすぎる…。


何とか泰麒が本来いるべき場所である、
十二国の世界に来ることが出来たわけですが、
そこでも麒麟として未熟な自分を不甲斐なく思い、
頭を悩ませる毎日が続きます。


泰麒の周りの女仙たちは、
いつも泰麒のことを大事にしてくれますし、
麒麟としての能力がないことを決して責めません。

でも、
その優しさが泰麒にとっては苦痛なんです…。

よく鬱病の人に、
「頑張れ」と言ってはいけないと言いますが、
泰麒を見ていると確かに良くないな…と思います。
そんなつもりはなくても、追い詰められてるじゃないの〜。

さらに、
『月の影 影の海』にも登場した景麒がやらかすんですわ。
子ども相手に冷たい言い方をして、
さらに泰麒を追い詰める。

景麒が妙に居丈高で冷たいのは何故か、
この『風の海 迷宮の岸』でわかりますね。
いくら遠慮がないとはいえ、女仙たちがかしずいて豪華な暮らしをしているんだもの。
(泰麒風に言えば、「お金持ちの子になったみたい」)


麒麟に変身するやり方がわからない泰麒に、
「手を上げるのにやり方を聞きますか?」と、
やや煽り気味で言い放つ景麒。

「説明できないし、説明してもおわかりになると思えない」とイキる景麒。

そして10歳の泰麒に気を使わせまくる景麒。
お前ほんと何やっとんねん!


そんなクズすぎる景麒も、
天使のような泰麒と触れ合うことで、
優しさを少しずつ獲得していきます。
いや、もともと仁の生き物だから、
景麒だって本来は優しいはずなんだけど。
それが自然に出せるようになったということですかね。


とにかく暗くて重たかった『月の影 影の海』に対して、
こちらはとにかく微笑ましい。
泰麒と景麒の仲良くなっていく姿が、とにかく尊い。

日本に残してきた家族のことが恋しくて、
こちらで良くしてくれるみんなに申し訳なくて、
景麒の前で涙を流す泰麒。
気の利いたことは言えなくても、
必死で泰麒を励ます景麒。


なんて尊い瞬間なんだろう…。
涙で前が見えないよ。


なんというか、
この話では「周りと馴染めず苦しむ」人たちが結構出てきます。

泰麒はもちろんそうですが、
女仙たちも理由はわからないけど世間に馴染めず、昇仙した人たちです。

そして景麒は、
肝心の景王と馴染めない。
うまくコミュニケーションが取れずに、
苦悩しています。


だからこそ、
泰麒の気づかいや苦悩、卑屈な態度が、
愛しく健気で、いたいけに感じるんでしょう。


泰麒が何とか麒麟としての本来の姿を取り戻し、無事に王を選んだときは、
周りと馴染めず苦しむ人がようやく、
生きる希望や本来の役目を手に入れたという、
カタルシスを感じていたと思います。


当の本人である泰麒は、
王の選定についてまた悩むんですけどね〜。
一波乱過ぎればまた波乱。


『月の影 影の海』は、
最近の「特に努力してなくても何故か主人公がモテてしまう」異世界ファンタジーではなかったので、
そういったものを愛好するキャンディボーイたちにはキツかったと思いますが、