あけましておめでとうございます。
えぞしまです。



2019年、1つ目の記事となります。
今年もどうぞよしなに。


新年はじめの記事は、何にするか迷いましたが、今年の楽しみなことの1つなるであろう「十二国記」を取り上げたいと思います。

「十二国記」シリーズは、小野不由美による大人気の異世界ファンタジーです。
なかなか続きが出てこないので、ファンは今か今かとと楽しみにしていたのですが、
ついに出版社が最新巻の原稿を受け取ったそうです。




というわけで復習も兼ねまして、
「十二国記マラソン」と称して、
各作品の記事を書いていきます。


まずはこちら。



厳密には、
シリーズの番外編?『魔性の子』が先に刊行されているのですが、
とりあえず本編の最初から始めていきます。




主人公は、普通の女子高生中嶋陽子。
クラスでは委員長をしているくらい、真面目なおとなしい子。
クラスメイトに宿題を見せてあげたりしていますが、
それは「面倒見がいい」というよりは「都合がいい」という感じ。

そう、
陽子って、すごく「空気を読む」人なんです。

だから、クラスメイトがイジメしても合わせちゃう。
委員長なんだから、本当は「やめなよ!」とか言うべきなんでしょうが、
波風立てるのが嫌、めんどくさい。


陽子の両親も困った人たちで、
父親は男尊女卑まるだし、母親はそれに粛々と従う。
当然、陽子もそんな風に育てられます。
「女の子は勉強より家事を覚えて」とかね。


しかも、
陽子は生まれつき髪の毛が赤っぽいんです。
なので、めちゃくちゃ真面目に振舞ってても、
「裏ではどうだか?」
「ああいう真面目な子は得体がしれない」
とか言われているんです。
先生にも「染めたら?」と言われてしまうし。


現実でも、
髪の毛が生まれつき明るい子に髪の毛を染めさせるという、
ダイバーシティもへったくれもないご指導がニュースになりましたね。


真面目にやってもダメ、
もちろん不良になってもダメ、
おまけに生まれつきの特徴をディスられる。


そりゃ、空気読みますよ。
陽子の置かれている環境って、
自分らしく生きようとするにはコストが高すぎるもん。


そんな酷い環境を生きる陽子のもとに、
突然金髪の青年がやってきます。


その金髪の青年というのがかなり変なんですね。
態度が横柄だし、
陽子を迎えに来た、とか、
ここにいては危ないとか、
訳の分からないことを陽子に言って、
連れ去ろうとします。


周りの人たちは、
「あ、やっぱり中嶋さんて金髪の不良とつるんでたんだ」
みたいな反応に。


最悪の印象を与えたまま、
陽子は異世界に連れてこられます。


この異世界が、まためちゃくちゃ変な世界で、
中国っぽいけど中国じゃないし、
みんな東洋人の顔立ちなんだけど、
髪の毛はいろんな色だったり。

何一つわけのわからない世界に無理やり連れてこられて、
陽子は妖魔に襲われたり、
災厄をもたらすなどと言われて追われたり、
親切な人かと思えば何度も裏切られ、
飲まず食わずで山を歩き回り、
心身ともにボロボロになっていきます。


特にキツイのが、
青猿という人語を話す妖怪につきまとわれたこと。
コイツが陽子の心を見抜き、抉ってくる。

さらに、クラスメイトや家族の幻を見せられるのですが、
クラスメイトが陽子をどう思っていたのか、ガッツリ見せてくるんです。
そして家族の実態も暴いてくる。
異世界に連れてこられて、すぐにでも帰りたいけれど、
実はもといた世界も地獄だったというオチ。


上巻は、
陽子が人間不審に陥り、
ひたすらボロボロになっていきます。


異世界ファンタジーって、
ライトノベルではよく見かけるんですが、
大抵主人公は異世界では重宝されますよね。

言葉も苦労しないし、
元の世界ではパッとしないんだけど、
なぜか異世界では主人公の存在そのものに価値があって、
何も努力とかしていないんだけど異世界で活躍できるという。


「十二国記」は、
そういうキャンディボーイの妄想みたいな、
甘い異世界ファンタジーではありません。
キャンディボーイには十二国記は辛すぎると思います。
だって、陽子めちゃくちゃボロボロだもん。
かといって、元の世界でも地獄の環境だし。


上巻はめちゃくちゃ読んでいてシンドイです。


けれど、
下巻に入ると少しずつ光が見えてきます。


だから、
シンドイけど読まないのはもったいない。


読めば十二国記ワールドに行くことができます。
さぁ、あなたも沼へ…!



というわけで、
続きはネタバレ全開の内容です。

ぜひ一度読んでから、
続きをご覧ください。
さて、
ここからはのびのびと感想を書いていくぞ!



『月の影 影の海』って、
いろんなテーマを含んでいて面白いんですよね。


学生のときは、
「マイノリティがこのくだらない世界を生きるには」というテーマが感じられました。
陽子は学校では「赤毛」だし、
十二国の世界では「海客」だし。
楽俊は半獣というだけで、故郷では人扱いしてもらえない。成績めちゃいいのに。

陽子はすごく空気を読む人です。
刊行は90年代だけど、陽子の思考はすごく2010年代の若者っぽい。
波風を立てたくないので、常にマイノリティしぐさみたいなのをしているんだけど、全然評価されない。

異世界をボロボロになって旅するうちに、
「あ、この生き方ダメだ」と気づく。
マイノリティしぐさが無意味だと気づくんです。
そして、貧しくて愚かな自分をやめて、一からやり直したいと願うわけです。
結局、王になるから「やり直す」ことはできないわけだけど、
少なくとも今までの空気を読むだけのつまんない陽子ではない。
その成長が学生時代の私にはグッときました。


今回読み返してみると、
また違うテーマを感じます。

陽子が王になるかどうか悩んでいるとき、
「もっとマシな人間になってからの方が…」
と言って、なかなか決心がつかない。

楽俊は「王になってからマシになっていけばいい」と言います。
つまり「走りながら考えろ」というわけですね。
頭のいい楽俊らしい考え方です。

何かやりたいことがあるときに、
陽子のように「もう少し勉強してからの方が…」「スキルを身につけてから…」
とグズグズすることは、よくあります。


でも、
それっていつなの?
どういう状態なの?


陽子の場合、「マシな人間になってから」ですが、
「マシな人間」てなんだ?
そんなものにそもそもなれるのか?
って話ですよ。

「もう少し勉強してから」って、
どれくらい勉強してからのこと?
スキルを身につけるって、
どうなったら身についたと判断するの?

なかなか決心がつかないとき、
「もう少し成長してから」なんて言ってちゃダメなんです。
楽俊の言うとおり、やりながら成長していけばいいだけの話です。

なかなか腹が決まらなくて、
ひたすら悩む陽子の涙を、
背中からそっと拭う楽俊…。
とても好きなシーンです。楽俊も全裸だし!


その他にも、
巧王のめちゃくちゃ屈折した闇深な心理とか、
子どもは木になる女性に優しいシステムとか、
子どもは木になるのに娼館がある謎とか、
(中で何やってるのかしら…?)
いろんなテーマを含んでいるので、
何度読んでも発見があっていいなぁと思います。


前に読んだことがあると言う人も、
ぜひ一度読み返してもらいたいと思います。
2019年は新作も出ますし、
復習ということで、ぜひ。







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