ごきげんよう、えぞしまです。



夏の文庫フェアカドフェス2018のなかから、今回はこちらをご紹介。


内容(「BOOK」データベースより)

中学3年の尾垣真が拾った中世ヨーロッパの古城のデッサン。分身を描き込むと絵の世界に入り込めることを知った真は、同級生で美術部員の珠美に制作を依頼。絵の世界にいたのは、塔に閉じ込められたひとりの少女だった。彼女は誰か。何故この世界は描かれたのか。同じ探索者で大人のパクさんと謎を追う中、3人は10年前に現実の世界で起きた失踪事件が関係していることを知る。現実を生きるあなたに贈る、宮部みゆき渾身の冒険小説!


最近の異世界冒険ファンタジーって、ものすごく困難な時代だと思う。
何が困難かというと、異世界冒険ファンタジーって、どうしてもRPGになってしまうから。

というか、一度RPGというものを知ると、後から『指輪物語』とか読んでも「RPGの世界」から逃れられない。



なので、異世界ファンタジーものは相当工夫して書く必要があるわけですが、
そこはさすがの宮部みゆき!


宮部みゆきと言ったら、ジャンル問わず八面六臂で活躍している作家です。
引き出しがめちゃくちゃあります。
そうでないと、この作品はかけないと思います。

冒険ファンタジーのようで、ミステリでもあり、サスペンスでもあり、社会派小説の要素もある。
多面性のある作品です。



冒険が始まるまで、展開のスピードがものすごくじれったいです。
主人公・真と、相棒・城田の距離感をきちんと描いています。

二人って、リア充じゃないです。真は子どもだし、城田は全然コミュニケーションを取らない(取ろうと思えば取れる)。


だから、ご都合主義で急に仲良くならない。


本当の物語が始まるまで時間がかかる。
いや、本当はこの二人の距離の取り方がメインのコンテンツなのかもしれない。


最後はドドド…と一気に展開していき、登場人物たちはざらざらのまま終わっていく感じです。

ちょっと物足りなく感じるけど、メインのコンテンツはやはり二人のそれぞれの今後なんだろうと思います。



文庫版だと、池澤春菜さんの解説がついています。
池澤春菜さんは声優としてご活躍されていますが、ものすごい読書好きとしても知られています。

池澤春菜(ウィキペディア)


やはり、お父さんもお祖父ちゃんも作家さんだから、本を読む習慣が自然に身についたんでしょうか。
習慣と言うにはあまりにもすごい読書量だけど笑


池澤さんが副読本を紹介してくださってるので、それを読むと物足りなさは解消されるのかな〜と思います(希望的観測)。



とはいえ、単なる冒険ファンタジーものとは思ってほしくない作品です。
ファンタジーでしょ?と思ってると、ひっくり返されますよ。